準備完了、セット、ピペット!

準備完了、セット、ピペット!

インフルエンザ・エピデミックが科学の世界をテストチューブからマイクロプレート、次いでマルチチャンネルピペットへと変え、そしてより効果的な時代が幕を開けたのです。

80年代、90年代を通して科学的研究の動きはペースを上げる一方で、科学者たちに新たな一揃いの要求を課しました。勢いをつけたまま、エッペンドルフは技術革新の最前線に留まり、1981年には100万個目のピペットを販売しました。しかし、アッセイ容量の減少と試料処理量の増加がこの時代の特徴であり、液体ハンドリングの新規開発が要求されました。

The one-millionth Eppendorf pipette: a special edition of the Varipette® 4700.

エッペンドルフは従来通りこれに早急に対応するため、迅速かつ正確なアッセイ試薬と化合物の分注をサポートするためのポートフォリオを拡大しました。一方では、作業量が増えた場合にもユーザーの快適さを維持しました。大成功を収めたエッペンドルフのReference® 4910が1984年にリリースされ、エッペンドルフの高水準が再度確認されました。これが世界で最初の完全なオートクレーブ滅菌可能のピペットであっただからというばかりでなく、ユニークなデザインとテクノロジーコンセプトがとびきりの精度、失敗確率の低い正確度、高い耐久性を組み合わせたためでした。しかし、テクノロジーが徐々に進化し、シングルチャンネルピペットが作業のためのベストのツールではなくなった時、何が起きたでしょうか?

The first fully autoclavable pipette: Eppendorf Reference® 4910 in different volume variants.

インフルエンザ・インスピレーション

1950年代初期にハンガリーで起きたインフルエンザ・エピデミックでテストチューブが不足した結果、科学者達は必要なウイルスと血清の滴定ができないという事態に陥りました。これに対応するために、ハンガリーの物理学者で発明家のDr.Gyula Takátsyはプレクシガラスでできた6列12ウェルのまさに最初のマイクロタイタープレートを手作りし、診断テストの継続を可能にしました1。このデザインのパテントを取得したかったのですが、ハンガリー当局はこの重要性を認識できず、その結果Takátsyの特許申請を拒絶しました。しかし、地球の反対側であるアメリカではJohn Linerが96ウェルの似たようなパネルを考案、工業化を進め大成功を修めました2。面白いことに、

Takátsyの方法は、海外の企業がこの話を1956年のハンガリー難民から聞き、国際的に人気が高まりました3。しかし、50年代にアメリカ市場に初の成形96ウェルマイクロプレートがもたらされた一方、ヨーロッパで生産が開始されたのは1966年になってからでした。1990年代までには、ウェルの数、形、サイズ、プロフィール、材質、フィルターテクノロジー2のバリエーションがある数多くのマイクロプレートが入手可能となっていました。この時点では、シングルチャンネルピペットを使ったアッセイ試薬と化合物を迅速に分注する能力が試料処理のためのボトルネックとなっていました。

エッペンドルフの進化

1993年に発売された、エッペンドルフのTiterman 4908が研究者にソリューションを提供しました。一度に最大12種類の試薬を同時に分注できる能力を備え、エッペンドルフのTitermanマルチチャンネルはマイクロプレートの自然の分身になりました。96のピペッティングステップをわずか8ステップに減らすことにより、マルチチャンネルピペットは時間の節約および研究所の生産性に印象的なインパクトを持ちつつ、すべて正確性は維持します。

The Titerman multi-channel pipette for high sample throughput. In a single maneuver, it can be converted from an 8-channel to a 12-channel pipette.

薬剤発見、並びに、血清学的なテスト、免疫学的アッセイ、高処理スクリーニング、およびPCRにおける技術の発展といった分野の向上が、ここ数十年間にわたってマイクロプレートの使用を拡大し続けてきました。付随的に、エッペンドルフは研究所の皆さんの最新の要望に合うように一貫して対応してきました。384ウェルマイクロプレートは、現代の研究所では日常的に使用されており、より大きなマルチチャンネルピペットが性能を合理化するために必要になっています。エッペンドルフの16と24チャンネルピペットであれば、ユーザーはコラムまたは列をたった一度のステップで完璧に処理できます。

マルチチャンネルピペットはマイクロプレートで作業する際に液体を効率的にハンドリングするソリューションを提供する一方で、不均一なスペースの組み合わせのある異なったチューブの形状間で試料を動かす必要が問題として残っていました。シングルチャンネルピペットも使えるでしょうが、実際にはこの処理方法は非効率的かつ退屈、そして間違いも起きやすいのです。384ウェルプレートにシングルチャンネルのピペットを載せたことがありますか?2020年のMove It® seriesの発売は特にこの問題を狙ったものです。ユーザーが簡単にチップのスペースを調整できるため、頻繁にフォーマットを変更する必要がある場合には、作業の流れを加速し、簡素化することができます。

知的デザインは科学的

ピペットはむしろ単純なツールとして始まりましたが、科学的方法の拡大に伴い、多様化と発展とが必要になって来ました。科学の進化がどこまで進もうとも、エッペンドルフは時代と共に変化し、複雑なリキッドハンドリングの諸問題へのシンプルかつ信頼できるソリューションを提供することをお示しした次第です。アインシュタインがかつて言ったとおり、「知性の尺度は変化する能力です」。

 

もっと詳しく

 

参考文献
1. The History Of The Microplate | Microtitrator | Dr. Gyula Takatsy. www.wellplate.com/the-history-of-the-microplate/.
2. History of Microplates – The Plastics Historical Society. plastiquarian.com.
3. E. Farkas. This weeks citation classic 10 garfield.library.upenn.edu/classics1992/A1992JC14700001.pdf (1992).


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